
サッカー・サポート・センターのツイックラーです。今回はサッカー指導者におすすめ本の紹介第3弾です。
春から夏にかけて雨の日が多くなり、年々猛暑日が増加する中、室内でトレーニングをすることが多くなっているのではないでしょうか?ツイックラーの指導するサッカースクールも雨天時や猛暑日は室内で行います。室内のトレーニングといえば体幹トレーニングやラダーやラインを使ったコーディネーションなどボールを使わないものが多いと思います。
しかし限られた練習回数の中でボールを使わないトレーニングはもったいないなぁと感じており、1vs1や2vs2などのスモールサイドゲームはできないにしてもボールを使うことでボールの捉え方や捕り方、ボールの軌道の推測、ボールへのアプローチなどサッカーに役立つ能力を養うことができます。さらにゲーム性を盛り込むことで戦術や駆け引きも学ぶことができるので、なにか室内でもできるボール運動はないか模索していました。
そこで出会ったのが「バルシューレ」でした。最初はFacebookで知り、色々とネットでバルシューレを調べましたが表面的なものばかりで詳しい内容はわかりませんでした。詳しく知りたいと調べ続けていたところに今回紹介する本書を見つけ拝読しました。
大学の教授が創設したこともありバルシューレができた経緯やコンセプトから実践までしっかりとしたエビデンスや理論を持って話が進んでいくので難しい用語や話もありますがとても説得力のある内容となっています。
バルシューレは1つの競技の専門性を磨くものではなく子供たちの多面的な能力を伸ばしていくものです。1つのプログラムに様々な運動スキルが含まれ、さらに戦術を学び、駆け引きを覚えていくことができます。また以前紹介した「エコロジカル・アプローチ」の要素もふくまれており、バルシューレは色々なボール(硬い、柔らかい、大きい、小さいなど)を使ったり、コートの形や様々な条件下でプログラムを行い、与えられた環境の中で適応し無意識化にスキルを獲得することを目指しています。
なかなか自分では思いつかないプログラムがたくさんありとても参考になります。室内でのトレーニングだけでなくウォーミングアップやレクリエーションにも取り入ることができるバルシューレを知る唯一の一冊になりますのでバルシューレに興味がある方はぜひ読んでみて下さい。
★エコロジカルアプローチについては下記の記事を参照ください。

- 室内でもできるボール運動はないか知りたい
- 子供の基礎能力を養いたい
- サッカー以外の知識も得たい
本の紹介

【編者・著者】
- 奥田 知靖 (博士/北海道教育大学岩見沢校 准教授)
- 佐藤 徹 (博士/北海道教育大学岩見沢校 教授)
- クラウス ロート(博士/ハイデルベルク大学 教授、バルシューレ創始者)
選んだきっかけ
6月から8月にかけて雨天の日が多くなります。また近年の気温上昇に伴い7月、8月と猛暑日が頻発する様になりました。雨天の日や猛暑日は室内でトレーニングをするのですが、ラダーやマーカー、コーンを使ったコーディネーショントレーニングや体幹トレーニング、鬼ごっこなど長時間やるには単調になりがちになってしまいます。また限られた時間の中、ボールを使ったトレーニングができないことにもったいなさを覚え、少しでもボールを使ったトレーニングはできないか模索していました。
そして色々探していたところFacebookでこのバルシューレを知りました。バルシューレは基本的に室内で行えて、様々な大きさや形、固さのボールを使って行うゲーム性の高いボール運動なので探していたものとピッタリでした。

室内でのボールトレーニングができないか模索していたところ出会いました。
バルシューレについて詳しく解説している本はほとんどなくこの本が唯一といっていいほどのバルシューレ解説本です。バルシューレの基礎理論、たくさんの実践プログラムなど考え方から進め方、実際のプログラムの内容まで網羅している為、この1冊で多くの学びとトレーニングの引き出しを増やすことができました。
注目ポイント

バルシューレは簡単に言うとボール運動のことです。ただしボールをキャッチやバスケットボールのドリブルのようなただ単純な1つのことをひたすら続けるものではなく、1つのボール運動にゲーム性をもたせ、さまざまな運動を組み合わせることで効率的に、かつ効果的に無意識のうちに様々なスキルを身につけさせること可能になります。
このようなバルシューレについて、考え方や理論、実践方法を解説しているのですが大学の教授が考案したこともあって、学術的な理論や用語がたくさんでてくるため非常に文章が硬く、読むのに苦労することがあります。1つ1つ丁寧な解説と例があるので、少し指導をしたことがある方は理解がしやすいと思います。本書はバルシューレそのものを学ぶこともできますが、運動発達促進に効果的なバルシューレの内容や方法はサッカーの指導にも当てはめることができます。本書についてツイックラーが気になる用語や押さえておきたいポイントをいくつか挙げてみました。
バルシューレとは
ドイツ・ハイデルベルク大学で創設された子供のためのボール運動教室である。全ての子供にスポーツをと言う主旨で始まったバルシューレは最新のスポーツ科学の知見に基づき、次の4つのスローガンにしたがっている。
・多面的な運動を経験すること
・子供は小さな大人ではない
・遊び(ゲーム)が上達の最上の道
・習う前にやってみること
バルシューレの基本原理
①多様な運動を経験すること
②子どもの発達に即したもの
⓷楽しいものであること
④潜在的学習
…ゲームに付随した多くのスキルを直感的で無意識のうちに獲得することができる
ミニバルシューレ
①ミニバルシューレの学習内容
A:運動系基礎スキル
B:技術-戦術基礎スキル
C:コーディネーション基礎スキル
②ミニバルシューレにおける遊び(ゲーム)の発展
・自由遊び
・動機づけ遊び
・課題遊び(ゲーム)
③全人教育としてのバルシューレ
小学生低学年のバルシューレ
①小学生低学年のバルシューレ学習内容
A:戦術
B:コーディネーション
C:技術
②ミニバルシューレからバルシューレへ
幼児を対象としたミニバルシューレはプレーを構成する基本的な動きの獲得が特に重要な カギとなる。これらの発展としての小学生低学年のバルシューレでは、ボールゲームの一般(種目横断)的視点から習得内容が構成され様々なゲーム空間で多様な運動経験やゲーム経験を積むことを目的としている
バルシューレの方法論
①ゲーム系列の方法的原則
ゲーム系列では潜在的学習が重視される。1つから複数の戦術的課題を含むようにする。
②練習系列の方法的原則
バルシューレのプログラムではコーディネーション領域と技術領域の用法帆を向上させることが重要となる。
③一元性
最初は各領域の学習要素を個別に向上させることを目的とした一元的なゲーム及び練習が中心となる。指導が進むにつれて様々なゲームに必要な課題を加えていく形で、複雑な多元的なゲームおよび練習を増加させていく。
④学生要素の独立性
例えば、激しいチームゲームを行う前に、仲間との関連が少ないげーむや、専門的なスキル課題がないゲーム、相手なしのゲームを行うのが良い。
⑤運動実施形態の多様性
ボールゲームを包括するバルシューレでは、例えば打ち返し型ゲーム課題の際には、手か足またはラケットを選択することができる。つまり色々なやりかたで行う多様性が重要である。
実際にトレーニングに取り入れたこと

本書には指導プログラムがいくつも載っており、そのうちの風船を使ったプログラムや野球ボールサイズのプラスチック製ボールなど様々の性質のボールを使ったプログラムなど参考にさせて頂きました。その他にも指導プログラムだけでなく指導のアドバイスも記載がありとても参考になりました。

まずは取り入れやすいものから始めて、経験値を積んでいくことが大事かと思います。
動機づけ遊び
動機づけ遊びでは問いかけを通して子供の想像力をかき立て、よりゲームに向けさせるようにしていきます。例えば「今から冒険者になって宝物とりにいこう!!」、「怪獣から自分のボールを守るぞ」など物語をつくり子供たちの想像を広げてあげます。
物語を作ってあげると不思議と子供たちのゲームに対するイメージがついてゲームが盛り上がったり、真剣に取り組んでくれることが多いです。

ただし、想像力が強すぎて指導者が鬼や怪獣になりきっちゃうと本当に怖がって泣いちゃうことがあるので気を付けて!!
風船を使ったバルシューレ
雨天時の室内トレーニングに風船はとても使いやすいです。壁や蛍光灯などの壊れ物を傷つけたり、壊したりすることもなくトレーニングできるので、よく風船を使ったバルシューレを行います。運動量もあり脳の活性化やボールを捉える力も養うことができます。

風船は簡単に続けられるので子供たちは汗だくになって夢中に追いかけますよ。
まとめ
- バルシューレとはハイデルベルク大学で創設されたボール運動教室
- 大学で創設された為、内容は学術的であったり難しい表現が多い
- バルシューレの基本原理から幼児向け、低学年向け学習内容が記載されている
- たくさんのバルシューレのプログラムが載っていて取り入れやすい

たくさんのプログラムが載っているので、様々なスポーツの基礎となる運動を目的に合わせて獲得していきましょう。enjoy football!!

選手が育つかかわり方や声のかけ方を参考にするには下記の本がおすすめです。

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